新製品開発とIT/IoT

タクシー配車サービスや街なかの空き駐車場仲介サービスなど、GPSなどのセンサやモバイルネットワーク、スマートフォンを使った新しいビジネスが続々と生まれています。 中堅製造業においても、自社の機械設備を遠隔保守によりメンテナンス技術者の現地出張を大幅に減らしてコスト削減したり、設備データを解析した故障予知により、設備停止となる前に予防整備するサービスを提供して新たな収益源とする取り組みが行われています。

これらのサービスを可能としているのは、①3G/LTEなどモバイルネットワークの普及、②高性能な処理能力を持つスマートフォンなどのデバイスが安価に入手できること、③コンピューターサーバーで稼働するデータ分析やAIの機能がクラウドサービスとしてインターネット経由で簡単に利用できること、④ソフトウェア開発がオープンソースソフトウェアを利用することで容易になったこと、が主な要因です。 ネットワーク、スマートフォンなどのデバイス、クラウドは誰でも利用できます。オープンソースソフトウェアも誰にでも公開されています。つまり、道具は簡単に入手でき、作ること自体の技術的ハードルは大幅に下がってきました。

新製品開発の成功確率

俗に、千三つと言います。商談がなかなかまとまらないことや、食品業界では千個の新製品を開発しても、モノになるのは、そのうち三つしかない、という意味で使われているようです。

新製品が首尾よく開発できたからといって、その製品が売れる保証はありません。失敗すれば開発にかけた人員や費用が経営に大きなダメージを与えかねず、大企業ならともかく、経営資源の限られた中小企業にとっては、新製品開発はギャンブルに近いと言えるでしょう。

では、中小企業が新製品開発の成功確率を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。

開発の基本手順

新製品のアイデアが浮かぶと、一気呵成に開発・製品試作まで終え、気の早い社長は初ロット1,000台を在庫に抱えた状態で、さあどう売ろうか、とこの時点で販売戦略を立てようとするケースを目にします。これは手順前後です。

実際の開発作業に入る前に、事業性・採算性や技術的実現可能性を検討することで開発が失敗する確率を下げることができます。フィージビリティ・スタディと呼ばれている作業です。

新製品のアイデアに対して、①それが製品化できたとして、いくらくらいの販売価格になるか、買ってくれる人がどこにどのくらいいるか、売上規模はどの程度になるか、②開発するための技術的課題は何か、解決できるか、要員、費用、期間はどの程度かかるか、③材料・原料の入手ルートと、製造した製品を販売・提供するルートはどのようになるか、自社でできないならどこと組むのか、④競合相手はいるか、競合製品と比べて、当社製品を利用者が選ぶと考える理由はなにか、などが主要な調査・検討テーマになります。

中小企業の場合は、自社の事業の資産が使えるかが重要です。既存の顧客へ売れるか、自社保有技術が応用できるか、販売チャネルを流用できるか、など。

中小企業が取組む新製品開発

顧客軸と製品軸で分類される4つの領域

顧客軸と製品軸で分類される4つの領域

ヒト・モノ・カネ・情報・パートナーをたくさん持っているわけではない中小企業が新製品開発に取り組むとき、顧客軸と製品軸のふたつの軸で考えることが有効です。

つまり、現在のお客さんか、新規のお客さんかという分類と、現在の製品と同じ分野の製品か、これまで経験のない分野の製品かという分類のふたつの軸で、組み合わせると4つの領域ができます。

このうち、左下の「既存顧客・既存製品」の現在の事業領域から右隣りの「新規顧客へ既存製品(主力製品を新規顧客に合わせてマイナーチェンジした製品)」か、上隣の「既存顧客へ新製品(新規技術を使ったこれまでにない製品)」が取り組みやすいといえます。

右上の「新規顧客へ新製品」の領域は、一般的にはうまくいかない確率が高い既存事業からの『飛び地』になります。高い技術を持つ開発パートナーや、自社にない販売ルートを持つ販売パートナーなどとコラボレーションすることが成功確率を高める条件となります。

IoTを応用した製品の事例

 

歯ブラシのスマート化

サンスターの「G・U・M PLAY」は、歯ブラシに加速度センサーを取り付けて、正しい磨き方ができているか、チェックできます。

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ベーカリー向けスマートレジ

ブレイン社のBakeryScan*は、トレイに乗せた多品種のパンをカメラで撮影してAIで認識し、価格を自動計算します。

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スマートロック

ライナフ社のNinjaLockは、スマートフォンで賃貸住宅のドアのカギを開け閉めできます。

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センサ内蔵タイヤ

ブリヂストン社のCAIS*は、タイヤ内部に加速度、温度、圧力のセンサと発電機を取り付けてデータを送信し、路面の状態を判別します。

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